3/23・つづき

周荘【ヂョウヂュアン】

周荘の表門

目的地である水郷の村に入る。
ビデオを見すぎたためか正直言うと感激は少し薄かった。
(でも、勿論おもしろい)
“先日見たビデオには映っていなかったが、直に見る水郷の水は残念ながら濁っていた。

水郷と柳

所々からメタンガスと思われるあぶくもたっていた。
水底は泥がヘドロ化しているのかも知れない。水質浄化策として泥の除去作業などもやっているらしくよけい濁りはひどいらしかった。
澄んだ水を作ることは大変なのである。それがタダであり幾らでも手にはいると思いこんできた日本人はこの点馬鹿としかいいようがないだろう。”

水郷三景・その一 水郷三景・その二 水郷三景・その三

土産物屋

掛け軸もやっとまあまあの物を買えた。(完全な物はやはりないのだ)
“この店ですごい偶然に出会った。
店の中で日本人らしき3人組の女性が買い物をしていた。日本語、中国語の両方できる奥さんがアドバイスなどしていた。”
と、聞こえてくる声を聞いていると何か聞き慣れたイントネーションである。
どうも、関西系には間違いないらしい。いや、それどころか…
「どこから来たの」
「私たち…三重です」
「うそ、三重のどこ?俺、鳥羽なんさ」
「えー!私、伊勢…この子は二見ですよ〜」
と、ドラマチックな展開になった。     一口メモ
もう少し話したい気もしたが、何となくそのまま別れた。

店番の女性を撮ろうとすると…

◆出会い

しばらく歩いていると水郷村の中で画学生達の写生に遭遇。
今度は奥さんと同郷と聞いて奥さん大はしゃぎ。何十分も話し込んでいた。

はるばる写生旅行に来た画学生達

“この村は淀山湖畔にあり、古い集落を文化保存・観光地化したものだが、「明治村のような場所の中」に住人達が普通に暮らしていた。
三上さんは「人が暮らしているからたたずまいがいいんだね。街が生きているんだなぁ。こうじゃなきゃいけないよ」と、おっしゃっていた。その通りだと思う。

学生達と一緒に記念撮影

この村の人は自分が店番であれ、客である我々が話しかけても御飯を止めない。
子供達は歩きながら食べていた。
写真の子達は我々が行く先々で会った。
チョロチョロと動き回るのでこの2枚撮るのにやけに苦労した。
日本に帰ってからこの二人や学生達のものを含め、何枚かの写真をご夫婦へ送った。下の二枚の写真は「別の知り合いと共に水郷村にはまた行く機会があるはずだから、二人を訪ねて渡すよ」、とおっしゃっていた。喜んでくれるだろうか”

昼ご飯中の子供達 やっとこさ追いついて、パシャ

◆画の店

油絵見たいに、撮りたいと…

“狭い路地を入った先に小さな画の店があった。すでに見飽きていた派手でペラペラなみやげ物ではなく、手書きの繊細な画が壁にたくさん並んでいた。自分のみやげに買おうかと店番の女性に話を聞く。(勿論奥さんの通訳を介してだけれど…)
「これはあなたが自分で描いたのですか?」
椅子から立ち上がった背の高いその女性は静かに頷いた。
奥さんを通じて、
「そうだって、全部自分で描いたんだって」
と返事を聞いた。
女性は小さく上品な声で奥さんに色々と説明を続けていた。
今でもかなりはっきり覚えているその女性の姿は…はじめ、物足りないと見えた顔立ちも声を聞きながら近くで見ると「日本的な」色白の美しい人だった。艶のある長い黒髪で服装は白かごく薄いクリーム色のタートルネックのセーターを着ていた。薄いショールを羽織り、スカートは渋い赤系統の丈の長いものだったと思う。足元は…少し怪しいが確かかかとの高いブーツを履いていたように記憶する。

なぜ、これほどの人が、こんな古ぼけた田舎の観光地にいるのか…例えは非常に悪いが、動物園にかこわれた美しい鳥や獣を見るようで私は悲しくなっていった。
雰囲気は…表現は古いが「谷間の姫百合」とでもいうような澄み切った感じの人で、「こんな女性は日本ではほとんど見かけなくなったな」と思った。
私は壁の絵と女性を見ているうち、だんだんと頭がクラクラしはじめた。
「日本に一緒に行きましょう」と言いたくなってきたが、必死に我慢して絵だけ買って店を出た。
代金を支払うとき、その女性までもが「いくらなら買って頂けますか?」と聞いてくるので、何だかこちらが泣きたい気持ちになった。
『だいたい、気持ちを込めて作ったものに値段なんて付けようがないのに…そんなさみしいこと言うなよ』と、言いたかった。
だが、所詮客でしかない私はせいぜい「表示の値段でいいです」と言うくらいしかできなかった。
それも結局、「いいじゃない、まけて貰いなさいよ」とご夫婦から何度も言われ、仕方なく一割か二割まけて貰うことになった。

その画は今でも、家の廊下に飾ってある。”

ゲッ!俺より背が高い

石畳と街・その一 石畳と街・その二 その三…あっ!三重の女性達が写っている

◆昼食

水郷村に入る前に予約しておいた店に行く。周荘からは少し離れたところだった。
料理直前にひねった鳥のスープ煮など、あっさり味の昼ご飯。メニューは他にワンタン、菜の炒め物、川エビの甘辛炒めなど。
店を出たところに放し飼いにされていたガチョーを一羽つぶして貰って夕食にすることになる。“その店ではヤギも何頭か飼っていて、その理由を聞くと、
「ヤギも家族の一員」
その後に、案の定「ミルクも取る。食べることもある」と続く。
そういうことが日常的な中国。生命について少し考えざるをえない。

仲ののいいガチョウさん達…なのに… ガチョーの運命は… もはや、風前のともしびなり…

ヤギさん

◆帰宅後

昨日、カメラ店に出していた現像とプリントを取りに行き、中身を見て出来の悪さにガックリ。
写真をまるで分かっていない自分にもガッカリ。
“晩ご飯に出た、ガチョーは少しパサパサしていたが料理の腕もあり、おいしく頂いた。せめてもの供養によく味わって食べた。”


1999.3.23

夢の途中